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百合SS(版権)


前のブログを削除しちゃったときに、
一緒に消えてしまったので、再度アップです。

ぷらいべったーで公開している、
桜Trickのコト×しずの二次創作百合SS。

ちょっとシリアスめ。

続きからどうぞ。

↓↓↓

コトしずSS
「800円の魔法」


 ……永遠なんてない。
そう悟ったのは、そんなに最近のことではなくて、だからこそ「それ」がおとずれる瞬間を引き伸ばそうと思った。
たかだか17年の人生を送ってきたわたしがそう言ったら、なにを立派なことを考えてるんだ、って笑われてしまうかもしれない。
けれど、ううん、だからこそ、わたしはわたしの力で「彼女」と一緒にいられる時間をつくりたい。
コトネもそのことを知ってくれていて。なんとか、バイトを頑張ることができている。

 夏休みの終わりごろ。
人の入れかわりが少ない働き先で、ちょっとした引継ぎの作業があった。
それ自体はぜんぜん問題はなかったのだけれど。
「あっ、」
化粧室で手を洗ったとき、ふと見た自分の指先に違和感を覚えて、目をおとした。
「荒れてる……?」

 かさかさした手触り。
意識してみたら、あちこちに傷がついていた。
家で食器洗いをするときについたものもあるけれど、大半はバイト中についたものだと思う。

器用か不器用か、ってきかれたら、不器用な分類に入るんだろうな。

 ……さっき、店長に注意されたミスも、同じような内容で。
『商品を手荒に扱うな』なんて。『お客様にむかってつんけんするな』なんていうお小言もオマケつき。
どんなに気をつけて注意を払っても、いつもこんなものばかり。

 これがお小言で済むレベルで収まっているうちはいいのだけれど。

 ふと手を宙にあげて、それから両手を胸のまえでにぎりしめた。
 働く前と変わった手の硬さを感じて、身体のどこかがぎゅっと縮こまる。

「コトネ……」

 これが、これから「わたしたち」が進む道。
 誰に命令されたわけでもない、自分たちできめた約束ごと。

――高校を卒業したら、一緒に暮らそう。
――そこから、ふたりの道をみつけようよ。
――だから、お互いにどんなことがあっても、それまでは、支えあおうね。

 わたしは要領がよくないから、他人の前で上手くふるまえない。
学校やバイト先だってそうなのだから、きっと社会に出たらなおのこと緊張して、失敗することも多いと思う。
 その「失敗」って、どのあたりまで許されるんだろう。
 仮に。
 社会に出たわたしが、大事な場面で失敗をして……今日のミスのようなものだけじゃなくて、会社の取引先のひとに失礼な態度をとってしまったら。
普通に考えて、上司にきつく注意されて自己嫌悪に陥ってしまうか、最悪、クビになってしまうか。

 ちょっと考え過ぎかもしれない。直せるものかもしれない。
 でも、根っこから「こういう性格」なわたしにとって、それは棒高跳びみたいにハードルが高い。

 決心する前と比べて、ずいぶん硬くなった手のひらの皮。
 これだけ働いてみても、まだ理想に届かない。

 わたしは……。
 わたしは、ほんとうに。

 わたしたちのために、最後までやりとおせるの……?

「…………ん、」

 頬の筋肉を意識的に緩める。

「大丈夫、平気」

 だって、コトネがいるもの。

 ……コトネがいれば大丈夫だから……。

 言い聞かせて、無理やり営業スマイルを作る。

 幸い、もうバイトは上がる時間だった。
 スマートフォンの電源を入れ、ブラウザをたちあげた。

 調べたのは、話題になっているハンドクリームの種類。
いままで使っていなかったので、よくわからない。
検索結果をすらすらとみていき、高校生でも手がとどく値段のものを探した。

 帰りがけ。
夕陽が差し込む商店街の一角にある雑貨屋で、ハンドクリームを買った。
店員さんがすすめてくれたのは、やっぱり口コミで評判がいいのと同じものだった。

「入荷したばかりの新商品です。あたらしい香りがあるので、そちらもおすすめですよ」

 800円のハンドクリーム。
店員さんが包んでくれたラッピングの袋をバッグに入れて、まるで隠れていたずらをしている子どもみたいな気持ちになった。

「ごめん、コトネ」

 玄関の前。コトネはもう家にいる時間かもしれない。
だから、この作業を早く済まさなきゃいけなかった。
容器のキャップを外して、手のひらに液体を広げる。

 自分の手のひらを握ったときに頭に浮かんだこと。
一瞬でも、コトネとの未来を疑ってしまったことを知られたくなくて、恋人に秘密で、恋人とは違う香りを身に着けた。

**********

「しずくちゃん、手」

 真っ先に気づいたのはお母さんではなく、やはりコトネだった。
きっかけは、ふたりで晩ごはんの片付けをしていたとき。
 ふきんで水滴をとった食器をコトネに渡したときに、ふと触れ合った指先。
軽く触れ合っただけなのに、そのまま絡めとられて、ふにふにと感触を確かめられた。

 爪のつけ根をなでられるたびに、ぴりっとした刺激が身体の芯をくぐりぬけて、変な感じだ。

「こ、コトネっ……ちょっと、ちょっと、待って、くすぐったい……。まだ、手、拭いてないし……」
「いいの」
「な、なにがいいのよ……っ」

 ものごとをすべて見透かされている感じがして、反射的に手をひっこめた。

「しずくちゃん、顔まっか」
「う……」
「ハンドクリーム使いはじめたでしょ」
「な、なんで知ってるの……」
「ちいさな変化でも、しずくちゃんのことだけはわかるから」

 コトネは手のひらを握ってきていて。「ばか、変態」って言うのに、わたしはそれを拒否できない。

 かさかさになって、硬くなってしまった手。
 バイト中に、ほんの一瞬だけ心によぎった不安を、やっぱりコトネも知っていた。

 指と指の間にゆっくりとお互いを絡めて。体温を確かめ合う。
 ぎゅっと握って、瞳をゆっくりとあげる。
 う、と息が詰まって、本音がこぼれ出る。

「怒ってないの」

 目のまえのひとは、黙って首を振る。

「はたらき者の手だね」
「コトネだってそうだよ」
「ずっとさわっていたいくらい」
「うん」
「わたし、しずくちゃんのことがすき」
「……うん」
「全部がすき」

 コトネの背中にゆっくり手を回す。長い髪がさらさらしていて、これを味わえるのは綺麗な指だからだなと思って。
 ――……あーあ。
 なんて、皮肉。
 ハンドクリームを買ってよかった。

「しずくちゃんの指がすき。目がすき。髪がすき。まつげがすき」
「…………うん」
「キスしたときのくちびるもすき。つんつんした性格がすき」
「……………………っ、」
「だから、全部がすきなんだよ」

 そんなこと知ってるよ、重いよ、って冗談で返したかったけれど、ただ腕に力をこめるだけで終わった。

 わたしたちは、まだ子どもだ。
高校を卒業したばかりのふたりが、バイト代だけで暮らすのは都合がいい話。
……バイト中にこの手を見たとき、そんなことを思ってしまったから。

 たった1000円たらずで、こんな無鉄砲な未来の不安を解消できるものなんて、そうそうない。
ハンドクリームを買ったとき、それは魔法使いがくれた杖みたいな宝物に思えた。
 この手のひらにハンドクリームを塗ったとき、わたしはコトネを裏切った。

 でも、だめなんだ。
 不安って、大切なひとには伝わっちゃう。

「ねえ、今夜はさ、」
「うん」
「しずくちゃんのハンドクリームを貸して」
「え……なんでそんなこと言うの」
「だって、しずくちゃんの悩みは、わたしの悩みでしょ」

 おとがいをすくいとられて、軽く口付けられた。

「なんで悩んでるってわかったの」
「しずくちゃんがわたしに秘密で何か行動するときは、思うところあってのことだから」
「……幼馴染って、こういうときだめだね」
「こういうときがいいの」

 表情もかえずにそんな台詞をいってのける恋人がはずかしくて、嬉しくて。
コトネの女ったらし、ばか。ばか。
ぽかぽかと背中をたたいて、それから……顔をうずめた。

********

 お風呂あがりに、ふたりでベッドの上に肩をよせあった。
わたしがコトネの隣に座ると、ぎし、とスプリングがはずんで、少し恥ずかしい。

 手のひらをすうっと滑っていくコトネの指先から、ハンドクリームのさわやかな香りが広がる。
荒れている手が、硬くなってしまった手が、「彼女」の手によって変えられていく。

「面白いね」
「何が?」
「こうやってると、しずくちゃんとひとつになってるみたい」
「……そうかな」
「そうだよ? だってほら」

 形のよい、カーブを描いた爪をもっているコトネだけれど、よく見るとところどころが荒れている。
ふたりの体温で溶けたクリームが肌になじんでいき、荒れた部分が収まっていく。

「ねぇ」
「なぁに?」
「わたしも塗っていい? コトネに」
「いいけど……わたしはもう、しずくちゃんといっしょに塗ったからすべすべだよ」
「い、いいから、早くっ! や、やらせてよ……」

 慣れない手つきで手をとり、塗り始めると、最初はくすぐったそうに、次に身をまかせるようにして睫毛をふせている。

「コトネ、ごめんね」
「なにが?」
「……やさしいね、コトネ」
「普通だよ」

 恋人の爪先にすべて塗り終えると、そのままつうっとやわらかな頬に手をのばし、なでた。
 開いた彼女の瞳はわたしをまっすぐ見つめる。

「…………っ、」
「なに? どうしたのしずくちゃん? ちょっと、そんな顔してないで教えてよ」

 自然とゆるんだ感情は、心からあふれ出すものだった。
コトネと同じ香りに包まれて、「すき」っていう気持ちを嫌というほど浴びせられて。
…………もう、一生付き添っていくしかないじゃない。

 ばかみたい。
あの約束をしたときから、わたしたちは運命共同体なんだから。
どうしようもなくなったときは、共倒れしちゃえばいいんだ。
もう、どうとでもなっていい。
こんなふうに、コトネといっしょにいたい。体温を感じていたい。

「コトネ、わたしもすき。コトネのことがすき。だいすき」
「笑いながら言われても説得力ないよ」

 クールにふるまっている仮面がはずれて、年相応のおろおろとした態度がでてくると、ますます愛おしさがいや増してくる。
 こらえきれず、くすくすと笑っていると、コトネが体重を乗せてきた。

 あ、と思う前に天井がみえて、その上にコトネの亜麻色の髪がなだれおちてくる。

「こーら、秘密はだめだって言ったでしょ」
「言ってない」
「じゃぁ、身体で教えてあげる」
「別にいいよ。いくらでも?」
「……え?」

 不意をつかれたような表情をしたコトネの頭を引き寄せて、唇にキスをした。
 ……恋人とおなじ、やわらかな手のひらで抱き寄せて、深い夜にとびこんだ。

end
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プロフィール

縁石みどり

Author:縁石みどり
フチイシ・ミドリと読みます。

百合とBLEACHに人生を振り回されているひと。
趣味で可愛い女の子どうしの百合を書いてます。
同人サークルは「あんり部」。
女子高校生どうしのオリジナル作品が多め。

※ブログ引っ越しました。引っ越し先がここです。

同人誌
発行同人誌です。


Twins~姉妹マフラー総集編+~

(※18禁)

両想いだった双子姉妹が、17歳の誕生日を境に一線を超えてしまう。
禁断の恋を描いたお話です。ほの暗いです。
→とらのあな様




ふたりのマリアージュ

(※18禁)

好きなひとと恋人になったけれど、なかなかHができないネイリストさんの話。
いちゃらぶ百合。
→メロンブックスDL



キスだけの関係

放課後の図書室で出会った少女に淡い恋心を抱く主人公。
初恋のゆくえは。
→DLsite.com
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